島胡椒「ピィパーズ」
沖縄の香辛料は、亜熱帯気候の影響か独特の風味や濃いコクを感じると言われます。
島唐辛子や島生姜、島にんにく、ウコンなどがあります。
島胡椒・ピィパーズも沖縄の香辛料として昔から利用されてきました。
ピィパーズは、ナガコショウ(コショウ科)のことです。
和名でヒハツモドキ、英名でロングペッパーを言います。
英名を和訳したのはジャワナガコショウをさしています。
似ているために間違えやすいのは、インドナガコショウです。
ピィパーズは、南アジアが原産の常緑つる性植物です。来歴は不明です。
沖縄本島・八重山諸島・宮古島で帰化しています。
樹木や石垣塀に着生し、葉は狭卵形で光沢があり暗緑色で、茎と枝は緑色で、梢部分で開花結実します。
実は円筒形で先端は細くなっていてコショウの香りがします。
沖縄の方言では、ピーヤシ、ピパーチ、ピパーツ、ヒバーチ、フィファチなどたくさんの呼び名があります。
ピィパーズは石垣島方言での呼び名です。
ピィパーズの主な産地は、石垣島です。
八重山地方では民家の石垣に生えているので身近な食材として、若葉や実が利用されてきました。
ピィパーズの若葉は、硬ジューシー(炊き込みご飯)や天ぷらで、乾燥実は胡椒として八重山そばにかけ、生実はすりおろしてワサビのように刺身に利用してきました。
沖縄本島では、中身の吸物(中身は豚の内臓のこと)や山羊汁にピィパーズの実の粉末を、またナントゥ餅(味噌餅)の風味を引き立てる香辛料として使っています。
私は、ピィパーズを生かす会という団体に所属して、ピィパーズ料理を開発・レシピ集の監修をしております。
ピィパーズはシナモンの様な甘い香りと、ピリッとする辛さが特徴です。
簡単な使い方は、乾燥実(粉末)をコーヒーやかちゅー湯、スープ、チャンプルーなどに振りかけます。
実や葉は、魚のマース煮(塩煮)に加えて煮ると魚臭さが消えます。ピィパーズを加えることで風味が高まり、コクも強くなり、ほどよい辛さで美味しくなります。
また、お菓子ではクッキーや塩ちんすこう(沖縄の焼き菓子)の材料として少量加えるとピリッと辛くて癖になる味になります。
このようにピィパーズは、いろいろな料理に使うことができる汎用性の高い香辛料です。
また、ピィパーズの効能については次のようにあげられています。
① 体温を上げる。
② 辛味成分ピペリンが血流をよくし、冷えを改善する。
③ 食欲を増進させる。
④ 毛細血管の改善、美肌に効果。
一昨年からNHKテレビ番組等で、沖縄・石垣島でとれるピィパーズの実の成分が、加齢による毛細血管の変化を改善し美肌に効果のある食品として紹介されました。
その結果、ピィパーズは人気急上昇となり需要が増加したために、現在その加工所は在庫がほとんどない状態となっています。
ピィパーズは、大量生産できる香辛料ではない為に、今後は沖縄本島内でも計画栽培を進めていく方向へとピィパーズを生かす会では取り組んでいます。
沖縄の島胡椒・ピィパーズは、料理の風味を高め、健康や美容にもよい香辛料です。
塩と混ぜて普段のお料理に使うと摂取することができます。但し、1日の摂取量はスプーン1杯(2g)までです。
沖縄には隠れた食材がたくさんあると言われます。このピィパーズもそのひとつでありましたが、今では沖縄の宝物と表現される位に注目されるようになりました。
今後も、ピィパーズのような沖縄の食材を大切に守りお伝えして行きたいと思います。
「美味しいだしのとり方」
今回は、美味しい日本料理のだしをとる二つの方法と、沖縄料理でよく使われるだしをご紹介致します。
一つ目は次の順番でだしをとります。加熱してだしをとる方法です。
① だし素材(だしをとる材料のこと)を準備します。
水(軟水)1ℓに対して昆布10gとかつおけずり節(薄削り)30gを用意します。
② 鍋に水と昆布を入れて30分以上おきます。
③ 加熱します。水の温度が70℃くらい(鍋底と昆布に細かい泡が出ている状態)で、昆布を取り出します。
④ さらに加熱し、沸騰直前(約90℃)で火を止めて、かつお削り節を入れます。そのまま、1分~2分浸します。かき混ぜないようにしてください。
⑤ こします。「一番だし」がとれました。お吸物や薄味の煮物、茶碗蒸しなどにお使いください。
二つ目はとても簡単です。水だしの方法です。水だしは、暑い夏に重宝します。
① フタ付のピッチャー(注ぎ口のあるもの)を用意します。
② だし素材を準備します。
水(軟水)1ℓに対して、昆布10g、かつお削り節(薄削り)30gを用意します。
③ ピッチャーに②を入れてフタをして、冷蔵庫で一晩おきます。(6時間以上)
④ 翌朝、お味噌汁やだし巻き卵、煮物などにお使いください。
両方のどちらでも、だしがらが出ます。だしがらを捨てるのは勿体ないので、だしがらに、水とかつお削り節を足すことで「二番だし」をとることもできます。その場合、かつおけずり節は最初に入れた量の約3分の2を加えます。「二番だし」は、多少濁りますので家庭料理全般に使うとよいでしょう。
水だしの場合、次のだし素材の組み合わせでも美味しいだしがとれます。
水(軟水)1ℓに対して、
① 昆布10g+乾しいたけ3~4枚
② 昆布10g+煮干し30g
③ 昆布10g+さくらえび(乾燥)10g
沖縄料理では、主に豚だしやかつおだしを使います。また、豚だしとかつおだしを混合して使います。
まず、豚だしのとり方です。
① 材料の準備をします。
豚肉(塊)300gを水でさっと表面を洗い、水気をとります。
② 鍋に①の豚肉を入れ、豚肉にひたひた程度の水を注ぎます。最初強火で、沸騰したら中火~弱火にして微沸騰で30分~40分程茹でます。途中でアクをていねいにとります。
③ 竹串で豚肉を刺して、濁った汁が出なければ茹で上がりです。鍋から豚肉を取り出し、豚だしはこします。
④ 保存する場合は、茹でた豚肉と豚だしを一緒に容器に入れ冷やし、冷蔵庫で保存します。保存期間は3日程度です。または、冷凍保存しましょう。保存期間は1週間くらいです。早めに使いきりましょう。
次は、かつおだしのとり方です。日本料理ではかつおだしをとる際、薄削りを使う場合が多いですが、沖縄料理では厚削りを使います。
① 材料を準備します。
水1ℓに対して、かつおけずり節(厚削り)30gを用意します。
② 鍋に水を入れ、加熱し微沸騰(約90℃)でかつお削り節を入れて、15分程度煮出してこします。
③ 保存期間は、冷蔵庫で3日くらいです。または、保存用袋に入れて冷凍庫で保存します。冷凍保存は1週間くらいです。早めに使いきりましょう。
以上のだしのとり方は、基本的なとり方です。
きちんとだしをとってから、ご自分流のだしのとり方でだしを楽しみましょう。
だしの風味やうまみを引き出すのは塩です。
美味しいだしに入れる調味料は塩のみでも十分です。