豆板醤(トウバンジャン)
中華料理の辛味調味料と言えば、代表的なものに豆板醤があげられます。
辛さだけではなく、コクのある風味と少し酸味のある香りがあります。
豆板醤は、中国では豆瓣醤(ドウバンジャン)といい、そら豆で作った味噌のことで、唐辛子を加えたものは豆瓣辣醤(ドウバンラージャン)と呼んで区別します。
しかし、日本では唐辛子入りを豆板醤と呼んでいます。
原料は、そら豆、米、大豆油、ごま油、塩、唐辛子などです。
豆板醤は中国四川省で200年以上前に初めて作られ、今でも四川省は一大産地です。
伝統的な製法は、原料のそら豆の皮を剝いて、そのまま麹に漬け食塩を添加し、半年程度発酵させた後に、唐辛子などを加え1か月から数年熟成させます。
工業生産では、蒸したそら豆で麹を作り高温短期間発酵させます。
熟成が進むと、唐辛子の赤色がこげ茶色へ変化し、辛さはマイルドになりまろやかな味になります。
長く熟成されたものほど色が濃く、高価で高級品とされます。3年物で高級品、5年以上のものは最高級品とされます。
中国では1年ものから販売されますが、日本に輸出されるものは2年以上のものが多いです。
麻婆豆腐や回鍋肉(ホイコーロー=豚肉とキャベツ)などには、より熟成したものを使うとよいとされ、乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン=エビのチリソース)などには赤い色がきれいな熟成期間が短い豆板醤が用いられます。
用途は豆板醤のほか、棒々鶏(バンバンジー)、担々麺、炒め物、スープ、鍋物、麺料理、タレ、ドレッシングなどです。
栄養成分は次のようになります。
トウバンジャン(100g当たり)
エネルギー60kcal、水分69.7g、たんぱく質2.0g、脂質2.3g、炭水化物7.9g、食物繊維4.3g、ナトリウム7000mg、カリウム200mg、カルシウム32mg、マグネシウム42mg、リン49mg、鉄2.3mg、亜鉛0.3mg、ビタミンK 12μg、ナイアシン1.0mg、葉酸8μg、ビタミンC 3mg、食塩相当量17.8g (日本食品標準成分表2015年版)
豆板醤にはナトリウムが豊富です。消化されてブドウ糖やアミノ酸に変化した
栄養素は、小腸から血液中に溶け込んでいきます。この溶け込みをナトリウムは助けています。
唐辛子の辛味成分にはカプサイシンが含まれ、脂肪分解酵素のリパーゼの働きを活性化させます。
エネルギー代謝が活発になり、脂肪の燃焼を高めます。
また、交感神経を刺激するため、脳への刺激で熱が発生しますので、冷え性に役立ちます。
カプサイシンの辛味は、胃や舌を刺激するので食欲を増進させるそうです。
唐辛子の赤色色素であるカプサンチンは、抗酸化作用を持ち、アンチエイジング効果もあるそうです。
カプサンチンも血行をよくし血流を増やして手足を温める作用があります。
他には、免疫や味覚などの機能維持に関与している亜鉛や、血液中の酸素運搬や筋肉中の酸素貯蔵に関与している鉄分も含まれています。
手軽にできる麻婆豆腐の作り方を紹介します。
材料(4人分)
木綿豆腐・・・1丁半
豚ひき肉・・・150g
長ねぎ・・・・1/2本
にんにく・・・1片
生姜・・・1片
サラダ油・・・大さじ3
片栗粉・・・小さじ2
水・・・大さじ1と1/3
合わせ調味料
豆板醤・・・小さじ2
砂糖・・・大さじ1と1/2
醤油・・・大さじ4
赤味噌・・・小さじ1
作り方
① 長ねぎは1cm長さのぶつ切りにし、にんにく、生姜はみじん切りにします。
② 豆腐は横に2cm厚さに切り、2cm角に切ります。鍋に入れてかぶる位の水を加え火にかけ、煮立てない程度にあたためておきます。
③ 合わせ調味料を混ぜ合わせておきます。
④ 別の鍋に油を低温に熱し、にんにく、生姜を炒め、香りが出たらひき肉を加えて、強火でパラパラになるまで炒めます。
⑤ ④の鍋に、合わせ調味料を加え、よくかき混ぜながらひき肉にじゅうぶん味がしみるまで炒め、水カップ1/3(分量外)を加えてひと煮立ちさせる。
⑥ ⑤の鍋に水溶き片栗粉を混ぜながら加え、とろりとなったら、水気を切った温かい豆腐と①のねぎを加え、鍋をゆすりながら、鍋底から静かに豆腐をくずさないようにかき混ぜ、豆腐に味がしみたら、器に盛ります。
豆板醤は料理に使うのは少量だけですので、冷蔵庫で眠っていることもあります。
おいしく使いこなす方法としては、豆乳スープ、ごまだれ、チャーハンなどに入れるとピリ辛メニューになり、飽きずに楽しむことができます。
まだまだ暑い時期ですので、食欲のない時に、豆板醤を使ってみましょう。
納豆
納豆は、畑の肉と呼ばれる大豆を納豆菌によって発酵させた食品です。
起源にはいくつかの説があります。
弥生時代説、聖徳太子説、戦時中説があります。
商品化されたのは江戸時代と言われ、また納豆を美味しく食べるための醤油の製造もその頃に始まったと言われます。
この頃には、朝食の定番になっていて、納豆売りも現れたそうです。
消費量のランキングでは、1位宮城県、2位新潟県、3位福島県、沖縄県は最下位です。(平成29年 総務省統計局 家計調査)
7月10日は「なっ(7)とう(10)の日」と関西納豆工業共同組合が制定しました。
今では全国的な記念日になりました。
納豆には糸引き納豆と塩辛納豆などがありますが、一般的に糸引き納豆を指します。
糸引き納豆は、粒の大きさや豆の種類、発酵容器の種類に分けられます。
粒の大きさには、大粒、中粒、小粒、ひきわりがあります。
ひきわり納豆は、製造工程で皮が取り除かれていますので、消化がよく高齢者や乳幼児の食事に利用することもできます。
豆の種類では、一般的に普及している納豆には黄大豆がよく使用されます。
珍しいもので青大豆を使用することもあります。
また、黒豆で作られるものもあります。黒豆の場合、からしよりもわさびが合います。
容器では、最も普及しているのは発砲スチロールです。
その他にわら、経木があります。
容器によって品質管理の難しさや香りなどに違いが出ます。
納豆の特徴の臭気は、68種類のにおい成分から構成されているそうです。
納豆菌の発酵によるものです。
製造工程において、蒸した大豆に生育する納豆菌が大豆のタンパク質を分解して、各種のアミノ酸に分解されます。
納豆菌の生育に伴って、γ-ポリグルタミン酸を生成するとともに、さらにアミノ酸が分解して、匂い成分のピラジン類やジアセチル、そしてアンモニアを発生します。
臭いを消す食べ方の方法の一つには、納豆に付属のたれ以外に、ポン酢醤油を加えると納豆の臭いが覆い隠されます。
最近では、臭いが少なめの商品も市販されています。
市販品にはたれが付いています。
納豆に味と香りを加える目的で、かつお節や昆布などのだしと、醤油などを混合したたれが付いています。
納豆を食べるときは、よくかき混ぜて空気を十分に含ませると、ふんわりとした食感を楽しむことができます。
地域によっての食べ方の違いがあります。
新潟県や東北・北海道では納豆に砂糖を加えて食べます。
その理由は、納豆に砂糖を加えて混ぜると粘り気が強くなり、更に美味しくなるからです。
納豆は冷凍保存ができます。
パックのまま冷凍し、食べる前にパックを切り取って、たれやカラシを取り出し、電子レンジで20秒~30秒加熱し、半解凍の状態にたれをかけることで解凍します。
刻みねぎ、削りかつお、からしを混ぜて醤油味で食べる他、味噌汁、まぐろ和え、パスタ、サラダ、トースト、キムチ、冷やしうどん等いろいろな料理に使えます。
最近では、アイスクリームに混ぜる等、スィーツとしても食べられています。
糸引き納豆100g当たりの栄養成分は、
エネルギー200kcal、水分59.5g、たんぱく質16.5g、脂質10.0g、炭水化物12.1g、食物繊維6.7g、カリウム660mg、カルシウム90mg、マグネシウム100mg、リン190mg、鉄3.3mg、ビタミンK 600mg、ビタミンB1 0.07 mg、ビタミンB2 0.56 mg、ビタミンB6 0.24mg、葉酸120μg、食塩相当量0gです。(日本食品標準成分表2015年版 )
主な栄養の特徴は、食物繊維が多く腸の健康を保ち、便秘を予防します。
カリウムも多く含まれ、血圧を下げ、筋肉や心肺の活動を正常に保ちます。
良質たんぱく質を豊富に含み、筋肉や血液を作り、エネルギー源となります。
ビタミンB6は、免疫機能を健全に保ちます。
ビタミンKも多く含まれ、カルシウムを骨に沈着させる働きがあります。また、血液凝固をさせる成分となります。
その他の栄養成分として、女性ホルモン様物質のイソフラボンが豊富に含まれ、骨粗しょう症予防やアンチエイジングに効果的と言われています。
ナットウキナーゼと言う納豆菌によってつくられる酵素が、納豆のねばねばに含まれています。血栓を溶かす働きがあります。
ただし、ナットウキナーゼは熱に弱く、50℃以上になると活性が低下するので、常温で食べることをお勧めします。
沖縄では消費量が低い納豆ですが、栄養成分の豊富なことを知ると、是非毎日の食卓へ並べたいものです。