魚醤
魚醤は魚介類(カタクチイワシ・ハタハタ・イワシ・イカなど)を発酵・熟成させて造る液体調味料です。
濃厚なうまみと独特の風味があります。
魚醤の元は、中国の「醤(ひしお)」と言われています。
この醤をもとに造られた塩漬け発酵食品のひとつが魚醤です。
小魚やアミ(アミ目の甲殻類)などをワタ(内臓)と一緒に大量の塩で漬け込み、ワタに含まれる酵素で魚介類のたんぱく質を分解して、うまみを生成させた魚のしょうゆです。
日本では、鎌倉時代から魚醤が使われていましたが、室町時代になり大豆を原料としたしょうゆが普及すると、魚醤は一部の地域を残して廃れていきました。
しかし、現在もいくつかの地方では魚醤が用いられています。
特に日本の三大魚醤と言われているものを以下に紹介します。
① 秋田県:「しょっつる」
ハタハタ(秋田県の県魚)から造られます。
「しょっつる鍋」が有名です。ラーメンのスープやドレッシング、付けダレなどの隠し味としても使われます。
② 石川県:「いしる(いしり)」
原材料が、イワシやサバの場合は「いしる」、イカの場合は「いしり」。
である「いしる鍋」や野菜炒めに加えたり、ラーメンに垂らすなど隠し味にも使えます。
③ 香川県:「いかなごしょうゆ」
瀬戸内海の魚いかなご(コウナゴ)から造られます。
強いうまみがありながら、すっきりした風味で冷奴や刺身のつけしょうゆ、煮物、野菜炒めなどにも使われます。
その他、国外でも魚醤は使われています。
有名なものだとタイの「ナンプラー」があります。
近年の東南アジアのエスニック料理でブームとなり、日本でもスーパーの調味料コーナーに陳列されるようになりました。
日本のしょうゆと同様に万能調味料のように使われます。スープや鍋物、カレーの調味料、揚げ物のたれやサラダドレッシングなど、多くの料理に使われています。
他にも同種のものがベトナムの「ニョクマム」、フィリピンの「パティス」、中国の「魚露(ユウロー)」などがあり、蒸し魚にかけたり、鍋物の調味料などに使われます。
古くは、古代ローマにおいて「ガルム」と呼ばれる魚醤が使われていました。
イタリア南部のアマルフィ周辺では、ガルムの流れをひくカタクチイワシの魚醤「コラトゥーラ」が今でも作られています。
【料理での利用方法】
料理への使い方は、魚介類の鍋物や煮物に、普通のしょうゆと同じように用い、魚醤は、うまみ成分のイノシン酸が豊富なので、だしを使わなくてもよいです。
また、隠し味として加えると、どんな料理にも合いうまみがアップします。
魚醤の保存方法は、未開封の場合は常温で直射日光を避け、涼しい場所に保管します。
開栓後は、キャップをしっかり閉めて冷蔵庫に保管します。
【栄養成分】
魚醤は少量でも塩分が高いのが特徴です。使う際には塩分に注意しましょう。
「しょっつる」100g当たり
エネルギー29kcal、水分69.4g、たんぱく質6.1g、脂質0g、炭水化物1.1g、ナトリウム9600mg、カリウム190mg、塩分24.3g。
「いしる(いしり)」100g当たり
エネルギー68kcal、水分61.2g、たんぱく質12.8g、脂質0g、炭水化物4.2g、ナトリウム8600mg、カリウム260mg、塩分21.9g。
「いかなごしょうゆ」100g当たり
エネルギー65kcal、水分63.0g、たんぱく質13.9g、脂質0g、炭水化物2.1g、ナトリウム8300mg、カリウム480mg、塩分21.2g。
「ナンプラー」100g当たり
エネルギー48kcal、水分65.5g、たんぱく質9.1g、脂質0.1g、炭水化物2.7g、ナトリウム9000mg、カリウム230mg、塩分22.9g。
(上記4つの出典元:『日本食品標準成分表2015年版(七訂) 同追補2016年』)
【料理】
「エスニック風チキンの炒め物」をご紹介します。
◆材料(4人分)
鶏肉(もも肉)・・・・・・・400g
ナンプラー・・・・・・・大さじ2
やさしい砂糖・・・・・・大さじ1
沖縄の海水塩青い海・・・・・少々
こしょう・・・・・・・・・・少々
おろしにんにく・・・・・小さじ1
しょうが汁・・・・・・大さじ1/2
粉唐辛子・・・・・・・・・・少々
植物油・・・・・・・・・大さじ1
◆作り方
① 鶏肉は一口大に切ります。
② ボウルにナンプラー、やさしい砂糖、沖縄の海水塩青い海、こしょう、おろしにんにく、しょうが汁、粉唐辛子を入れてよく混ぜ合わせる。
③ ②に①を加えて20分ほど漬け込む。
④ フライパンに植物油を熱し、③を入れて炒める。
いつもの料理に魚醤を隠し味として加えて、うまみをアップさせてみましょう。
Mari’s Kitchen Studio Happy おうちごはん
沖縄の野菜 島カボチャ(ウリ科)
カボチャの原産地はメキシコ南部です。
日本には15世紀末頃に渡来したと言われています。
ポルトガル船がカンボジアから持ってきたので、カンボジアがなまってカボチャとなったそうです。
スーパーなどで販売されているカボチャは、次の3種類に大別されます。
① ニホンカボチャ(菊カボチャ、黒皮カボチャなど)
② セイヨウカボチャ(黒皮栗カボチャ、ぼっちゃんカボチャ等)
③ ペポカボチャ(ズッキーニ、金糸カボチャ等)
この中で島カボチャは、①ニホンカボチャの中に分類されています。
島カボチャは、沖縄で古くから作られてきた在来種で、方言名は「チンクヮー」、「ナンクヮー」と呼ばれています。
夏の暑さや病害虫に強く、家庭でも育てやすく、つる性1年生草木です。
収穫時期は6月から10月頃です。
沖縄県内では、宮古島市、糸満市、豊見城市で作られています。
九州地方でも作られています。
島カボチャの形は、ひょうたんや長カボチャに近いものが多く、大きさは1~10kgとかなりの幅があります。
このように形や大きさがまばらなのは、沖縄にカボチャが伝わった後、個々の農家が種を自家採取し、繰り返し栽培していく中で他の品種との自然交配などによって生まれてきたと言われます。
食感は、比較的水分が多く粘質です。
甘味は少なくあっさりした味です。
表皮の色は、黄緑・黄・赤・オレンジ色などいろいろあります。
よいものの選び方は、皮の色が濃くて固く、手に持ったときにずっしりと重く、皮の表面が白く粉を吹いたものを選びます。
完熟したものや、長期保存していると全体がオレンジ色になってきます。
[保存方法]
常温保存の場合は、冷暗所で風通しのよい場所におくだけで約1カ月以上保存できます。
一度切ったものは、冷蔵保存でワタや種の部分をくり抜いてラップでぴったりと包んで保存すると、約1週間おけます。
冷凍保存する場合は、種とワタを取り除いて料理に使う大きさにカットしてからバットに並べて、一度冷凍してから保存袋に入れて冷凍します。
冷凍後は、解凍しないでそのまま調理します。
煮物の場合、調味液を沸騰させてから入れます。
冷凍することでカボチャの組織が壊れるので、煮崩れを防ぎカボチャから水分が出てしまわないようにする為です。
[栄養成分]
島カボチャ(生)可食部100g当たり
エネルギー29kcal、たんぱく質1.4g、脂質0.2g、食物繊維総量1.8g、カルシウム9.8mg、鉄0.36mg、ビタミンA 2110㎍、レチノール当量176㎍、ビタミンK 82㎍、ビタミンB1 0.06mg、ビタミンB2 0.03mg、ビタミンB6 0.19mg、ビタミンC 5mg
(『おきなわ島ヤサイガイドブック』 平成30年3月 沖縄県園芸振興課 )
いろいろな栄養素を含む島カボチャは、秋から冬に向けて栄養補給できる野菜です。
多く含まれているビタミンAは、粘膜の抵抗力を高め細菌感染を予防し、免疫機能をアップさせます。
またビタミンCは抗酸化作用があります。
ビタミンKは血液凝固を促します。
ビタミンB1は、糖質の代謝に補酵素として使われます。
カルシウムは骨や歯を作ります。鉄は酸素の運搬をします。
[料理]
島カボチャは、味がしみやすく柔らかいので煮物に向きます。
また煮崩れしにくいので、炒め物やサラダ、和え物に利用されます。
天ぷらやスープなどにも用いられます。
今回は、簡単に作れる「島カボチャの炒め煮」のレシピを紹介します。
◆材料(4人分)
島カボチャ・・・・・・・・・500g
ニンニク(みじん切り)・・・1片分
玉ねぎ・・・・・・・・・・・100g
ベーコン・・・・・・・・・・ 60g
かつおだし・・・・・・・・100ml
オリーブオイル・・・・・ 大さじ2
沖縄の海水塩青い海・・・ 小さじ1
醤油・・・・・・・・・・・・少量
◆作り方
① 島カボチャはワタと種をくり抜いて、5mm厚さのくし切りにする。
② 玉ねぎは薄切りにする。ベーコンは1cm幅に切る。
③ フライパンにオリーブオイルを熱し、ニンニクを炒めて香りが出たら、ベーコン、玉ねぎを加えて炒める。玉ねぎがしんなりしたら、島カボチャを加えて中火で炒める。
④ だしを加えて、沖縄の海水塩青い海、醤油で調味し、フタをして島カボチャがやわらかくなるまで弱火で煮る。
美味しくて栄養のある島カボチャを食べて風邪予防しましょう。