八丁味噌
category:調味料の知恵袋
2021年2月23日
八丁味噌は、岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある愛知県岡崎市八帖町(旧八丁村)で江戸時代初期より、旧東海道を挟んで向かい合った2軒の老舗が伝統製法を守りながら造り続けている豆みその銘柄です。八丁村で造られた味噌なので「八丁村の味噌」から「八丁味噌」と呼ばれています。色は茶褐色、堅い味噌で、味は大豆のうま味を凝縮させた濃厚なコクと少々の渋味があり、香りが弱く、塩分が少ないのが特徴です。八丁味噌は、大豆、塩、水だけで造られています。岡崎城で生誕した徳川家康は、八丁味噌を珍重し、江戸幕府を開いてからも三河国(現・愛知県岡崎市)から八丁味噌を取り寄せて、味噌汁にして日常食のひとつとしていたそうです。
【歴史】
愛知県岡崎市は、古くから豆みその産地でした。矢作(やはぎ)地域で生産された大豆と、良質の天然水、三河湾の塩の産地吉良(きら)の饗庭塩(あいばじお)でつくられる味噌は、保存食として戦国時代の兵糧として役に立ちました。その後、江戸時代の初期に、早川久右衛門家と大田弥右衛門家が味噌醸造を八丁村で始めたことが八丁味噌の起こりと言われています。また湿気の多い土地である為に水分を減らし保存性を高める等、おいしい味噌造りに努力を重ねてきたこの2軒の味噌蔵は、現在も伝統製法を守りながら八丁味噌を造り続けています。
【製造工程】
八丁味噌は、大豆に麹菌を植え付けて豆麹を作り、それに塩と水を仕込んで発酵・熟成させて造ります。
① 良質な大豆と塩を準備します。
② 水洗いした大豆に適度な水分を含ませます。
③ 水分を含ませた大豆を蒸します。
④ 蒸した大豆を丸めて味噌玉を作り、表面に麹菌を付けます。
⑤ 麹室(こうじむろ)と呼ばれる専用の部屋で麹菌の育成具合を職人がチェックします。
⑥ 麹室から豆麹を取り出します。豆麹を軽く潰し、水と塩を加えて混ぜ合わせ、木桶へ仕込みます。専用の作業服や長靴を履いた職人が木桶の中に入り、しっかり踏むことで余分な空気を出します。
⑦ 仕込みを行った桶を熟成蔵に運び、川石を円錐状に積み上げて重石します。木桶の大きさは、直径と高さがともに2メートル、重さ700キロです。桶一杯の仕込み重量は約6トンで、その上に円錐形に積み上げる重石の重量は約3トンです。天然醸造で二夏二冬(ふたなつふたふゆ:2年)以上の間熟成を行い、八丁味噌が出来上がります。
【相性のよい組合せと使い方】
八丁味噌はチーズ、生クリームなどの乳製品や豆腐、厚揚げなどの豆製品と相性がよいです。
使い方は、みそ汁や煮魚、煮込み料理(煮込みうどん、シチュー等)やおでん、和え物、田楽、焼きおにぎり、炒め物、パスタ、ソース、タレ、ドレッシングなど幅広く料理に使えます。
また、八丁味噌のパウダータイプは、味噌汁、ローストビーフ、ステーキのつけ塩の代わりに、アイスクリームなどのスイーツに振りかけることもできます。
【保存】
封を切らない前は直射日光を避けて冷暗所で常温保存します。開封後は、容器に付いているシートやラップを味噌の上に貼りつけて冷蔵保存します。また、冷凍保存しても凍ることはありませんので、冷凍保存も可能です。
【一般的な赤味噌との違い】
味噌の色で分類すると八丁味噌は赤味噌の仲間ですが、八丁味噌と一般的な赤味噌とは次の違いがあります。
まず、原料の違いです。八丁味噌は大豆、塩、水に対して一般的な赤味噌は、大豆、米麹、塩、水です。麹の種類では八丁味噌は豆味噌で、一般的な赤味噌は米味噌です。熟成期間は、八丁味噌が約2年以上、一般的な赤味噌は3か月~1年です。生産地は八丁味噌が愛知県の岡崎市、一般的な赤味噌は東北地方です。
味の違いは、八丁味噌は濃厚で甘味と塩味が弱く、一般的な赤味噌は甘口と辛口があります。
【栄養】
八丁味噌は普通の味噌に比べて高たん白質、低塩分です。また、2年以上(普通の味噌の熟成期間は10か月~1年)も熟成しているので、良質なアミノ酸が多く含まれています。熟成期間が長いのでメラノイジンという褐色の物質が多くできます。メラノイジンは、強い抗酸化作用があることが知られており、アンチエイジング効果や糖尿病、ガン、高血圧に対する予防効果も期待できます。大豆そのものにも抗酸化作用がありますが、味噌が大豆よりも抗酸化力は高いと言われています。その他に、女性の美容に効果があると言われているイソフラボンや、便通の改善に役立つ乳酸菌も含まれています。
日本食品標準成分表には八丁味噌の成分は掲載されていませんので、次に豆みその成分を掲載しました。
「豆みそ 100g当たりの成分」
エネルギー217kcal、水分44.9g、たんぱく質17.2g、脂質10.5g、炭水化物14.5g、食物繊維総量6.5g、ナトリウム4300mg、カリウム930mg、カルシウム150mg、マグネシウム130mg、リン250mg、鉄6.8mg、亜鉛2.0mg、銅0.66mg、モリブデン64μg、ビタミンK19μg、ビタミンB1 0.04mg、ビタミンB2 0.12 mg、ビタミンB6 0.13mg、ナイアシン1.2mg、葉酸54μg、パントテン酸0.36mg、ビオチン16.8μg、塩分相当量10.9g。
(『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』)
【レシピ】
八丁味噌を使った「厚揚げの味噌チーズ焼き」の作り方を紹介します。お酒のおつまみに合います。
◆材料(2人分)
厚揚げ・・・・・・・・・・1枚
八丁味噌・・・・・・・・・小さじ3杯
ピザ用チーズ・・・・・・・20g
◆作り方
① 厚揚げは熱湯をかけ、水気をキッチンペーパーで拭き取る。
② ①を4等分に切る。
③ ②の上に八丁味噌を塗り、チーズをのせて180度のオーブンで5分焼く。チーズが溶けて薄く焦げ目が付いたら出来上がり。
うま味の濃い八丁味噌をいろいろな料理に使ってみてはいかがでしょうか。
山城 尚子
<管理栄養士・ソルトコーディネーター・だしソムリエ認定講師> 第1回「石垣島ピパーツレシピコンテスト」石垣市観光協会長賞、第27回新報音楽コンクール第2位(声楽)。
沖縄の塩の美味しさと素晴らしさを伝えたいと、積極的に塩を紹介しています。塩は料理のまとめ役で、食材と塩の組み合わせが良いと、塩の量を少なくでき、美味しさがアップします。
沖縄県民の健康を願い、美味しくキレイに痩せるダイエット料理や料理の基本となるだしを使った風味豊かな料理を提案しています。栄養と音楽と美容の三本柱で活動していきます。沖縄の心を料理で表現したいと心がけています。
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